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歌姫 Nachtigall [天地 あまつち]

作家ローベルト・ムージルの短篇小説「クロウタドリ」は、夜に声を響かせるナイチンゲールの声を聞き、人生がかわる物語です。実は、その声は、黒つぐみだった・・・のですが。

ドイツでは「春告げ鳥」といわれるのが、黒つぐみと友人のLeiが紹介していました。ナイチンゲールとは、小夜鳴鳥のこと。3月25日のエントリー『”墻靡 そうび”を語る 』で、ファラド-ウディン・アタールの「鳥の議会」にでてきたサヨナキドリのことです。

ただただその美しい歌声だけが夜に昼に鳴り響くというナイチンゲール。ミルトンの詩編『思いふける人』 《Il Penseroso》では「最も音楽的な、最も憂鬱な」とされ、嘆きの歌をうたう鳥として扱われ、ヘンデルが作曲をしています。またイギリスの詩人ジョン・キーツの『ナイチンゲールに寄せる歌』は、サヨナキドリのたえなる夜の歌を伝えています。

ペルシャでは、薔薇に恋したサヨナキドリは夜通し歌いつづけ、鳥の胸の血でみるみる薔薇を真紅に染めたという伝説があります。「鳥の会議」で、サヨナキドリが「私はバラのこと以外何も考えない。ルビーのようなバラ以外のものは何も欲しくない。……サヨナキドリが愛する者と離れて、一夜たりと過ごすことができようか・・・?」という一節がおわかりいただけるでしょう?

オスカー・ワイルドの『バラとナイティンゲール』、アンデルセンの『ナイティンゲール』など、このナイチンゲールは、もともとギリシャ神話の物語に由来し、ピロメレ(フィロメーレ)というのが、この鳥のもうひとつの名。古代ローマの大詩人オウィディウスOvidius(B.C.43-A.C.18)の著「Opera omnia」は、中村善也訳・岩波文庫のオウィディウス 変身物語〈上〉〈下〉とされて読み継がれています。この「Opera omnia」に、ギリシャ神話の「プロクネとピロメラ」が小夜鳴鳥になった伝説が描かれています。ミルトンの叙事詩失楽園では、愛しあうアダムとイヴのシーンや、イヴを堕落させようとするサタンが夢の中で語るセレナードに、小夜鳴鳥が囀るのです。

オリヴィエ・メシアン「鳥のカタログ:Catalogue d'Oiseaux」では、自然の中にある風景や、生物の鳴き声、動きなどをピアノの88本の鍵盤に移したピアノ作品集がありますが、ピアノ作品中最大で最高傑作とされている「ニワムシクイ La Fauvette des Jardins」では、サヨナキドリの、遠い月の世界から来るようなそのフレーズ。午前4時頃に鳴きだす「暁の鳥」ともいわれています。

また、ナイティンゲールの詩による音楽作品も数多くあります。(参考サイト 画像ギャラリー2
モンテヴェルディ(詩:グヮリーニ):マドリガーレ第8集より「心優しい小夜鳴鳥よ」
ディンディア(詩:ブラッチョリーニ)「聞きたまえ、小夜鳴鳥が」
モーツァルト(詩:シャハトナー)歌劇『ツァイーデ』~「望みを絶たれたフィロメーレはすすり泣き」
ラインホルト・グリエール(詩:メルツリャコフ)「やさしく歌ってた、私のナイチンゲールよ」
アレクサンドル・アリャビエフ(詩:デルヴィーク)「ナイチンゲール」
リムスキー=コルサコフ(詩:コルソフ)「バラと夜鶯」
プフィッツナー(詩:アイヒェンドルフ)「小夜鳴鳥たち」
ベルク(詩:シュトルム)「小夜鳴鳥」
モーザー(詩:シュトルム)「小夜鳴鳥」
シェック(詩:メーリケ)「フィロメーレに寄せて」
シャーウィン(詩:マシュウィッツ)「バークリー・スクエアで小夜鳴鳥が歌ってた」

それでは、Nightingale Erithacus megarhynchos から、羽毛は褐色の歌姫の鳴き声をお聞き下さい。

みにくいあひるのこ/ナイチンゲール―二ヶ国語絵本

みにくいあひるのこ/ナイチンゲール―二ヶ国語絵本

  • 作者: Hans Christian Andersen, ラボ教育センター, サラ・アン・ニシエ, 司 修
  • 出版社/メーカー: ラボ教育センター
  • 発売日: 1996/07
  • メディア: 単行本


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