漆黒の華 黒椿 [花物語]
「そはかのひとか」
ああ、たぶんあの方だわ!
おののきの中にひとりぼっちの魂が
幾たびか神秘な絵の具で描き楽しんでいたのは
あの方だわ!
控えめで注意深く悩める心の扉にあらわれ
恋に私を目覚めさせ新しい情熱を燃え立たせたのは
その恋に、それは全宇宙の鼓動であり
神秘的で誇り高く心には苦悩となり歓喜となる
1847年、ひとりの女性が23歳の短い生涯を閉じました。マリー・デュプレシという高級娼婦。かつて恋人だったアレクサンドル・デュマ・フィスは、マルグリッド・ゴーティエとして、彼女をお墓の中から小説「椿姫」という棺へおさめたのでした。
白い椿を愛し、月の5日間だけを赤い椿を身につける。原作は「椿を持つ女」といいます。ヴェルディが「ラ・トラヴィアータ」というタイトルで、1853年にオペラ初演となりました。このオペラは、デユマの物語と旋律の美しさで有名で、「乾杯の歌」、ビオレッタのアリア「ああ、そはかの人か」、アルフレッドのアリア「プロバンスの海と陸」などが知られています。
「椿姫」の椿は白椿と赤椿ですが、この黒椿の堂々とした魅力はどうですか。1枚目はナイトライダー、2枚目はブラックマジック、そしてブラックオパールという黒椿たち。
オパールという宝石をご存知でしょう。Opalという呼び名はドイツ語です。その語源はサンスクリット語の「upala:ウパラ」で、貴重な石を意味しています。椿姫を演じたサラ・ベルナールは、オパールをこよなく愛した一人です。
そのオパールの名を含む「ブラックオパール」という椿。ヴェルディのオペラ「ラ・トラヴィアータ」とは、「道を踏み外した女」という意であり、フランスでは、椿に「贅沢でお洒落な娼婦」を指すようになります。表にたたず、裏の華やかな漆黒の世界に生きる女性を象徴するにふさわしい華ではありませんか。
コメント 0