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道を知れ-Scivias [天地 あまつち]

Alle Schoenheit des Himmels. Die Lebensgeschichte der Hildegard von Bingen.「生き生きした光の影(umbra viventis luminis)が現れ、その光の中に様々な様相が形となって浮かび上がり輝く。炎のように言葉が彼女に伝わり、また見た物の意味付けは一瞬にしてなされ、長く、長く記憶に留まる。 また別の生ける光(Lux vivens)がその中に現れる事があるが、それを見ると苦悩や悲しみがすべて彼女から去ってしまい、気持ちが若返る。 」(Wikipedia)---これは、Visio ヴィシオという言葉で表現された神の啓示というべき幻視体験を受けた女性が、ベルギーのガンブルー修道院出身のギベール・ド・ガンブルーにあてた書簡の一文です。

1141年に、彼女自身が「Scivias (道を知れ)」で公にしたVisio(visions)は40代のとき。

彼女とは、イタリア ルネサンス時代のレオナルド・ダ・ヴィンチ(1452- 1519) のように音楽、自然学、病因・医療について著作を残し、皇帝、教皇らと激しく論争し宗教改革の先駆者として名を残した、ドイツのヒルデガルド・フォン・ビンゲン(1098~1179)のこと。

時は中世のヨーロッパ、その時代にふさわしい修道女でした。才能に恵まれ、神学者、説教者である他、宗教劇の作家、伝記作家、言語学者、詩人、芸術家であり 88人目の女性作曲家でもありました。社会と断絶された教会から、後世に残る偉業をはじめたのが38歳の頃。この時代は「12世紀ルネサンス」といわれるロマネスクからゴシックへの様式変化、教会音楽の発展、学問・文学の隆盛、さらに教会改革、十字軍の遠征などの激変の時代でした。

77曲もの中世ヨーロッパの宗教曲を、彼女は「天啓のハルモニアのシンフォニエ symphoniae harmoniae celestium revelationum」と名付けていました。ですが、作曲家には男性ばかりがあげられます。ショパンやリストの時代には、女性作曲家はいないのでしょうか。

試聴:Norma Gentile HP
Recordings
ヒルデガルドのビンゲンのイラスト:Norma Gentile HP
The Illuminations
ヒルデガルドのビンゲンのポエム:Hildegard of Bingen
poems and hymns 
Links for more information on Hildegard von Bingen 
参考サイト:Hildegard von Bingen


ハリカルナッソスのアルテミシア [天地 あまつち]

ハリカルナッソスは、トルコのボドラムにあった古代都市。アケメネス朝ペルシアの州知事であったマウソロスはカリア国を統治し、首都をここにしたのです。

肖像画の女性は妹にして妻であったのがアルテミシア。献身的な妻を象徴するといわれています。アルテミシアは先立ったマウソロスのために、ギリシア人建築家のピフエイとサチルの設計に、スコパス、レオカル、ブリアクシス、チモフェイという4人の高名な彫刻家によってフリーズが施された、世界でもっとも美しい墓、「マウソロス霊廟」をつくったのでした。

ティッシュバイン(Johann Heinrich Tischbein)が描いたアルテミシア。
彼女が手にしているものは、マウソロスの遺灰とワイングラスです。
彼の死から2年後のこと。悲しみのうちに彼の遺灰をワインに混ぜて飲み、そのまま息絶えたといわれています。

ですが、このアルテミシアは献身的な象徴だけではないのです。

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ルルドの泉 [天地 あまつち]

川の向こう岸のマサビエルの洞窟へ渡ろうと少女は思いました。そのとき2度にわたり、突風が吹く音が聞こえるのです。その少女は、音が聞こえたマサビエルの洞窟の方に目をこらすと、光の中に白い衣装と白いベール、手には白い玉と金の鎖、足元には黄色い薔薇の女性を見ました。まさしく聖母マリアです。

彼女こそ、1858年2月11日、薪ひろいにやってきたルルド村に住む14歳の貧しい家の少女ベルナデット(ベルナデッタ)・スビルーでした。

あるとき白い貴婦人-聖母マリアは、ベルナデットに「泉の水を飲み、その水で洗いなさい。」と言いました。その場所をベルナデットが掘ってみたところ、そこから水がどんどん湧き出てきて泉になったのです。これがすべてを癒す力があるルルドの泉。本当なのでしょうか。

Saint Bernadette Soubirous
彼女は尼僧となりましたが、1879年4月16日、肺結核により35歳の若さで他界します。そしてベルナデットは、いまもその美しい姿のまま眠っています。写真は、150年前の姿のままベルナデッタ。

聖ベルナデッタ・ヌヴェール 公式ホームページ


黒マリア [天地 あまつち]

この薔薇は黒真珠といいます。黒い薔薇の種類のひとつです。その名のとおり、美しい球体の真珠に白と黒がありますが、薔薇にも白と黒があります。薔薇にまつわるお話は、以前にも「薔薇 アブラカタブラ」をそえて記しましたとおり、聖母マリアを喩える象徴です。
参考:”墻靡 そうび”を語る ”墻靡 そうび” 古代の山茨

そして、みなれた白いマリア像のほかに黒マリアがあります。

アヴェ・マリアのaveは、Evaのの倒置であって、罪深きエヴァに対して清らかなマリアとされていますが、キリストに深くかかわる三人のマリアであるマグダラのマリア、ヤコブの母マリア、マリア・サロメは、聖杯を持ってフランスにやってきたなどという伝説があります。

12世紀頃、フランス各地にマリア像が発見されます。泉の底、樫の木、洞窟からですが、教会で祀っても、また元の場所へもどるという不思議な話。そして、このマリア像の特徴は「黒いマリア像」だったこと。

薔薇 黒真珠英国ではOurLadyとよばれていますが、黒いマリアの出現した各地には、「Notre-Dame ノートルダム」という名前の寺院が設営されています。パリ、アミアンをはじめ、シャルトルのノートルダム、ランスのノートルダム、バイユーのノートルダムは、線で結ぶと結ぶとおとめ座が出現するといいます。

私は、ノートルダムと聞くと、ヴィクトル・ ユーゴーの「ノートルダムのせむし男(原題 Notre-Dame de Paris)」を思い出します。 ディズニーでも、ヒロイン エスメラルダの声をデミ・ムーアが吹替えしたミュージカル・アニメがあります。ただ、せむしは差別用語にあたるらしいことを書き添えておきますね。(『せむしの子馬』という童話があったのですが、ご存知の方いらっしゃるでしょうか・・・)

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歌姫 Nachtigall [天地 あまつち]

作家ローベルト・ムージルの短篇小説「クロウタドリ」は、夜に声を響かせるナイチンゲールの声を聞き、人生がかわる物語です。実は、その声は、黒つぐみだった・・・のですが。

ドイツでは「春告げ鳥」といわれるのが、黒つぐみと友人のLeiが紹介していました。ナイチンゲールとは、小夜鳴鳥のこと。3月25日のエントリー『”墻靡 そうび”を語る 』で、ファラド-ウディン・アタールの「鳥の議会」にでてきたサヨナキドリのことです。

ただただその美しい歌声だけが夜に昼に鳴り響くというナイチンゲール。ミルトンの詩編『思いふける人』 《Il Penseroso》では「最も音楽的な、最も憂鬱な」とされ、嘆きの歌をうたう鳥として扱われ、ヘンデルが作曲をしています。またイギリスの詩人ジョン・キーツの『ナイチンゲールに寄せる歌』は、サヨナキドリのたえなる夜の歌を伝えています。

ペルシャでは、薔薇に恋したサヨナキドリは夜通し歌いつづけ、鳥の胸の血でみるみる薔薇を真紅に染めたという伝説があります。「鳥の会議」で、サヨナキドリが「私はバラのこと以外何も考えない。ルビーのようなバラ以外のものは何も欲しくない。……サヨナキドリが愛する者と離れて、一夜たりと過ごすことができようか・・・?」という一節がおわかりいただけるでしょう?

オスカー・ワイルドの『バラとナイティンゲール』、アンデルセンの『ナイティンゲール』など、このナイチンゲールは、もともとギリシャ神話の物語に由来し、ピロメレ(フィロメーレ)というのが、この鳥のもうひとつの名。古代ローマの大詩人オウィディウスOvidius(B.C.43-A.C.18)の著「Opera omnia」は、中村善也訳・岩波文庫のオウィディウス 変身物語〈上〉〈下〉とされて読み継がれています。この「Opera omnia」に、ギリシャ神話の「プロクネとピロメラ」が小夜鳴鳥になった伝説が描かれています。ミルトンの叙事詩失楽園では、愛しあうアダムとイヴのシーンや、イヴを堕落させようとするサタンが夢の中で語るセレナードに、小夜鳴鳥が囀るのです。

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七曜日 [天地 あまつち]

友人のXAIが、”つぶやくよう”なBlogをはじめました。2度目のエントリーが「April Fool 」でした。そこに、フランスでの暦が由来とありました。フランスの暦ですが、『詩人ファーブル・デグランティーヌによって創案された文学的な月名が付けられ、さらにすべての日付に植物にちなむ名がつけられているんだ。』と記してあります。浪漫がありますね。

ところで暦の七曜日は、宇宙から命名されています。天球上を移動する太陽、月、火星、水星、木星、金星、土星の7つの天体、いわゆる七曜が由来し、その日は守護星の名を以て呼ばれるようになったのですね。

太陽の日曜日 Diēs Sōlis ディエース・ソーリス:太陽
月の月曜日  Diēs Lunaeディエース・ルナエ:月
火星の火曜日 Diēs Martisディエース・マルティス:マルス(英名マーズ)
水星の水曜日 Diēs Mercurīディエース・メルクリース:メルクリウス(英名マーキュリー)
木星の木曜日 Diēs Iovis ディエース・イオウィス:ユピテル(英名ジュピター)
金星の金曜日 Diēs Veneris ディエース・ウェネリス:ウェヌス(英名ヴィーナス)
土星の土曜日 Diēs Saturnī ディエース・サトゥルニー:サトゥルヌス(英名サターン)

天体のほかに、ローマ神話の神の名もつけられています。

The Mirror Of The Gods

The Mirror Of The Gods

  • 作者: Malcolm Bull
  • 出版社/メーカー: Oxford Univ Pr (T)
  • ギリシャ、ローマの神々が芸術の世界でいかに復興してきたかを書いている本です。
  • メディア: ハードカバー

さて、フランスでは一時期、一週間が「十日」だったといいます。フランス革命直後にフランスのみで使われた暦法なんですよ。当時のカレンダーの画像と共にご紹介します。

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