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”墻靡 そうび”を語る [花物語]

「薔薇の秘儀」はアプロディテに捧げられた秘儀であり、「キプロス人は、アプロディテのバラがどういう花なのか知っている者しか愛さない」というのは、 ギリシア詞華集『花冠』に採録された12編の詩の古代ギリシア女流詩人ノッシス。その「ギリシアの愛の女神」とも「運命の女神」ともいわれるアプロディテは、「海の露」rosmarina と名づけられたローズマリー(バラ-マリア)の樹によって表されます。薔薇の特別な意は、古代の詩や神話、寓話がおしえてくれます。

-詩人セデュリウス-
茂みの栄光にして、王冠なる愛らしきバラの
自らはとげを持たねど、とげの間より咲き出でしごとくに、
イブの根より萌え出でし新しき乙女マリアは、
古き昔の最初の乙女の罪をあがなえり

-ファラド-ウディン・アタールの『鳥の議会』Parliament of the Birds -
私は愛の秘密を知っている。夜を通して私は愛の呼びかけをする。……バラの花を動かし、恋人たちの心を動かすのはこの私なのだ。……バラが夏再び咲き匂うとき、私の心は開き喜びに震える。私の秘密はみんなにはわからないが、バラだけはそれを知っている。私はバラのこと以外何も考えない。ルビーのようなバラ以外のものは何も欲しくない。……サヨナキドリが愛する者と離れて、一夜たりと過ごすことができようか?

The Parliament Of Birds (Hesperus Classics - Poetry)

The Parliament Of Birds (Hesperus Classics - Poetry)


  • 作者: Geoffrey Chaucer
  • 出版社/メーカー: Hesperus Pr
  • 発売日: 2004/10/14
  • メディア: ペーパーバック

12~3世紀に、聖母マリアは、「天界の女王の宮殿」であるノートル・ダム大聖堂において、女神として崇拝され、「薔薇」、「薔薇の蕾」、「薔薇の花飾り」、「薔薇の園」、「薔薇の花輪」、「秘密の薔薇」あるいは「最も聖なる薔薇の園の女王」として呼びかけられたのです。その女神の身体はまた、自らの内部に、男性の神性の本質を内包する宇宙でもありました。詩人セデュリウスもサヨナキドリも、そう謳っているのです。

もっと端正な説明を加えると、この1編の詩と物語では、女神崇拝の性的なシンボルと囁いているのです。それは、東西の宗教や文化を越えて、薔薇と女神の関係が深く潜んでいます。

緋色の中国の薔薇は「女神の花」といわれたのは、初潮を迎えた少女が体内に咲かせるという、ヒンズー教の神秘的な「クラの花」と同一視されたからです。

蒙古人は、ザンブという名で、宇宙の「バラとリンゴの楽園」をジャンブ島と同じものとしていました。島は女陰の形をし、その「ダイヤモンドの座」(クリトリスの象徴)において、人は鋭敏な知性を持った人間として生まれ代わることができたのです。

ユダヤ-キリスト教の伝承はこの祖先の樹を、男性の「生命の樹」(生殖器)と結びつけ、男性の家系を唯一の重要な血縁とみなしました。キリストの系譜は中世芸術では、横たわったエッサイ(ダビデの父)の腰から生えている男根の樹として描かれ、樹にはダビデ、マリア、イエスの姿を囲んで花や実がついています。

英国には「薔薇」として知られる伝統的な「仮面ダンス」は、5人の踊り手が、道化と呼ばれる犠牲者の上に5本の刀で五芒星形を作り、道化は象徴的に殺され、神秘的なエリキサ「黄金の霜の滴」あるいは「バラの花にたまった露の滴」により、復活したのです。これはまさに、「蓮の花の中の宝石」で、女性である花に落ちた精液の滴の西欧における変形なのですね。

「聖なる花」が女陰を意味するように、「花園」は子宮を象徴すると言われた。「霜の滴」(露)は、女神の中で自ら再生する神の精液を意味したのです。聖書は、露は精液の詩的な同義語である、と言っているのです。

ときには男性の「薔薇の精」は、「突き刺す」とげを持つブライアー・ローズ briarroseとして示されました。女性の赤いバラは男性のイバラ(ブライアー="prick")と対になっているのです。"prick"は俗語として用いられたときはペニスを指すタブー語であり、ブライアーは男性の薔薇なのです。ブライアローズの花言葉は「楽しみと苦痛」だそうですよ。そして、「あなたの天才的なところが好き」という意味もあるのです。さらに、墻靡しょうび・そうびとは、垣根にまとわりつくという意味をもっているそうです。

この画像の薔薇は「アブラカタブラ」といいます。Abracadabra - aburakatabura~ 
アブラクサスとは悪魔の一人で、この「アブラカタブラ」の語源にもなっていますが、「アブラクサス」をギリシャ語で数字に置き換えて足し算すると、1年365日になるそうです。この呪文「アブラカタブラ」とは、日本では、悪夢を打ち消すために、「夢を見た。枕の下の空手箱。開けてみたれば何事もなし。アブラウンケンソワカ、アブラウンケンソワカ」とでてくる「アブラウンケンソワカ」という祓いの呪文と同じで、悪を打ち消す呪文なんですね。

参考サイト:バルバロイ http://web.kyoto-inet.or.jp/people/tiakio/


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コメント 6

<a href="http://www.jocoso.jp/panga/">toku</a>

神聖なるもののイメージが、各国の神話や、聖書、由来から伝わってきます。^^
英国での「仮面ダンス」は、黒魔術的な要素が含まれているような?
ただ、女らしく・男らしくの「~らしく」という暗示が、古代から根付いている気がするのです。ギリシャ神話の女性達はか弱く、聖母マリアなどは、穢れのない象徴で、「薔薇」の譬えは、やはり美。以前のJOでのMARIKOさんのコメントに、『男性に「能動性」、「攻撃性」、「強さ」を割り当て、女性に「受動性」、「防御性」、「弱さ」を割り当てる』とありましたか、アダムとイブの種の起源からのものなのですね。by http://www.jocoso.jp/panga/
by <a href="http://www.jocoso.jp/panga/">toku</a> (2006-03-27 09:28) 

wanko

フェミニズムのことばとして捉えると、いま「女性の解放」から「男性の解放」に時代は変化しているのではないでしょうか。ヤン・ソギルの『男の性解放-なぜ男は女を愛せないのか』(情報センター出版局 1992年)では、男社会の病理を 男の側からはじめて衝いた衝撃的論考といわれています。女性は性の道具で、社会的存在を否定することで男の性差はなりたってるとあるそうですが、神話、聖書などからも、何千年もつづいてきた男性優位主義文化の産物を象徴していますよね。本当の生活者の「いま」はどうか。社会に女性が進出し、家事、子育てを分担する家庭が増えました。ただ、「性」に関しては、女性優位なのかがわかりませんね^^。皆が口を噤むでしょうから。それに性に限って、男性優位とさせておくことが、女性優位なのかもしれませんね。(笑)http://blog.oricon.co.jp/billiards/
by wanko (2006-03-27 09:50) 

INOUE

『鳥の議会』という寓話は、スーフィー教の指導者で詩人が著したものとありました。 スーフィーとは、イスラム教の主流派が「表」であれば、 いわば「裏」の宗教、秘教でしょう。コーラン原典主義からみれば、『異端中の異端と言える。』とありました。ところで、これは「鳥の会議」と表題があるものが、日本では多いようです。フーポーという鳥が、「私たち鳥には、サイムルグという名前の神様がいる。サイムルグは幻の国の宮殿の中で生活している。これからサイムルグに会いに行こう」と全世界の鳥に向かって話す。ここから始まるのですが、ミヒャエル・エンデにも、カメが神ではなく、王の結婚式にいく話があります。どちらも「行くことを決意」し、断念するかしないかというベースに共通するものがあるなぁと思っています。ところで、「鳥の議会」でロザリオを象徴するサヨナキドリの言葉は、ギリシャ神話において、「薔薇は秘密」を意味することを囁いていますね。http://www.jocoso.jp/lieben/
by INOUE (2006-03-27 11:11) 

fu-

to Panga
「~らしく」という暗示は、義務教育からすでに行われていますね。赤いランドセルは女の子、黒いランドセルは男の子。トランスジェンダーという言葉がひっきりなしに使われるようになった現代ですが、実は、その原書を読むと、日本で常識になっていることではありません。「~らしさ」ではなく「人」ですね。そして性の違いも受け入れるべきですね。
by fu- (2006-04-16 21:20) 

fu-

to wankoさん
いつも、fu-の各blogを巡っていただいてありがとうございます。
おっしゃるとおり、「噤む」ことがらに対し、本当のところがわかりかねますよね。ただ、解放が開放となってしまった時代であることは確かです。解放されたあと、どう生きるのか、どう満たされたいのかが曖昧ですよね。個人の価値観が重要視される現代では、数が多いほうが常識になる。何が素敵なのか、何が至福なのかを見極めて、でも自分はこうしていこうと思える生き方が必要なのかもしれません。自分の生活が常識と思ってはいけないですよね。
by fu- (2006-04-16 21:27) 

fu-

to 天才か悪魔くん
こんにちは、お元気そうですね。ネタバレになりそうですが、エンデのカメは、とにかくたどり着いたんですよね。鳥達は、何羽も脱落し、30数羽だったかな、たどり着く。そしてそこで真実が・・・。それが、行ったものにしかわからないことなのです。「薔薇は秘密」を意味しているのでしょうか。(笑)
サヨナキドリは、薔薇を愛するのですが、抱きしめると棘で死ぬ。しかし抱きしめずにいられない。まるで人間の苦悩そのものですよね。
by fu- (2006-04-16 21:33) 

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